2007年06月04日

恣意的か、否か。

なぜかきょう記事になったこれ
(サマリーはここにあったけど。←3月に発表されているし、4月にはここでも引用されている。)

【テレビ長時間視聴、3歳児の「社交能力」発達に悪影響】
幼児にテレビやビデオを長時間見せると、…「社交能力」の発達に悪影響を与える恐れがあることが、…調査で明らかになった。
ええっ、たいへんじゃないですか!どれどれ。
その根拠となった調査については、例えばこんなふうに書かれている。
友達とお菓子を分け合ったり、おもちゃを貸してあげたりなどの譲り合いができる幼児の割合は、(1日あたりのテレビ・ビデオの)視聴時間4時間未満が96・3%だったのに対し、4時間以上は80・2%と低かった。
はい。じゃあ、この数字をもって、「幼児にテレビを長時間見せると」→「譲り合いができなくなる」と結論づけてよいのだろうか。

原文(要旨)をみると、実はこの助教授さんは、微妙なエクスキューズをきちんと述べている。

しかし,保育施設への通園児と未通園児を比較すると,未通園児ほど視聴時間が有意に長く,発達が有意に遅い結果で,保育施設への通園状態がテレビ・ビデオ視聴時間と発達の関連を検討する際の交絡因子となっていた。
…だから、この交洛因子を排除できる分析をやったら、こうなったんだよ。と続くわけなのですが、ここがいちばんの怪しいポイントですね。
(※ちなみに「交絡因子」については、たとえばこのあたり参照。)

ごくフツーに、ただの一般おとーちゃんの立場から考えてみるに、この場合の「交絡因子」は、「保育施設に通っているか否か」ではなくって「親がどれだけ子供と接する時間をもっているか」でしょう。簡単!(→なのに、何故か間違って「保育施設の通園」に絞り込まれているのがダウト。)

この因子を排除した分析になるためには、例えば「親が子供と毎日3時間以上4時間未満接する家庭において」とか「親が子供と毎日30分以下しか接しない家庭において」というように、「親が子供と接する時間」という影響を排除した母集団のなかで評価しないといけない。
その(同じ集団の)なかで、「長時間テレビを見る子供は、譲り合いができない」という傾向があるのなら、それではじめて「テレビの影響」を疑ってもよい(かもしれない)。

でもね(以下、根拠のない断定形の私見になります。)
結果は絶対そうなりませんよ。

 「親が子供と接する時間が少ない家庭では」「子供は譲り合いができない(傾向が高い)」。
 「親が子供と接する時間が少ない家庭では」「子供のテレビ視聴時間が長い」。

ってそれだけのことなんでしょうよ。これ。

そこに目をつぶって、

 「テレビ視聴時間が長い」と、「子供は譲り合いができない(傾向が高い)」

っていうストーリを作っちゃうのは、インチキだと思うのですよ。


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△投稿者 satoru : 2007年06月04日 20:47

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▽ka-ko さんから、2007年06月05日 00:57のコメント

私もこの記事を見て、なんか胡散臭い・・・というか、
頭悪そうな感じがする調査だなァと思ってました。


▽satoru さんから、2007年06月05日 19:45のコメント

でしょでしょ。

でも実は、そうのこうの云いながら「胡散臭いの」がすきなんだよね~。




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