○『大きな物語』の欠如ーーイデオロギーの衰退 により、これにかわって社会を支配しつつあるのは、「説話論的な因果律ーー分かり易す過ぎるまでに解体可能な『物語』の構造」である。
○「この因果律によって社会が容易く扇動される」という危険に抗するためには、この「構造」を説明し批評していかねばならない。
○そのために自分は近代文学の再構築をやっていくのだ。
…というのが本書の梗概です。
というようなことを、わざわざ「あとがき」に書いてくれてる親切な書。
この過程で反復して述べられている現代社会を睨む観点には、概ねなるほどと唸らされます。
ただ、最後で作者が「いまどういう使命に駆られてるのか」という点に着地してしまうところが、(当然それがあって構わないのですけれども)どうにも鼻についてしまうのです。
思うに、ちかごろ(=特に9.11以降、)80年代のサブカルを担って世の中を煽った「団塊のシタ」世代は、いまになって「どうやら自分たちがそこで社会を曲げてしまったのではないか」ということに気がついたのではないか。なかでもペンを持つモノたちは、その贖罪にと慌てて各々のハタケで社会分析を試みてるのではないか。
そしてこの作者もその一角にいるのではないか。と、ウガって捉えてみると、微妙にシラケてしまう、、、のは「ババ引き30代」のヒネクレでしょうか。
※このエントリーはmixiのおすすめレビューから転記したものです。